遠くへ広がる視界と健やかな空気が安息の時間を創る『木楽な家』
自分たちのスタイルを表現できる家づくり
岡山県と鹿児島県にルーツを持つご夫婦が出会ったのは東京。結婚後に暮らした愛媛県でご主人が農業へのジョブチェンジを決意し、千葉県で約1年間、就農のための研修を受けることに。変化に富む生活を楽しんでいたが、その間の住宅は年季の入った社宅や借家だった。「どの地域でも、家の中の湿気に悩まされました」と奥様。
もともと二人とも自然のままの食や暮らし方に興味があり、鹿児島でスタートした農業でも無農薬栽培を選択している。就農して3年経ち、自分たちのスタイルが確立してきた頃に「農業をやりやすく、できるだけ地球にやさしい家」を理想に掲げて家づくりを計画。コンセプトに共感する複数のビルダーを巡った。
「木をふんだんに使っていたり、環境を活かしたデザインだったり。それぞれに魅力的でしたが、尾堂産業のモデルハウスに入った瞬間の木の香りと爽やかな空気の衝撃が大きくて。社長の尾堂さんからも嘘のない人柄を感じられて、こんな人が造る家に住みたいと思ったんです」。
敷地の制約を魅力に変えた楽しいプラン
A邸が建つのは、錦江湾と桜島を望む兵陵地。畑や雑木林の合間に住宅があるようなのどかな環境だ。仕事場である畑に通いやすい場所を探していたのはご主人。眺めのいいこの土地を見つけ、尾堂さんに相談。すぐに手配して購入まではスムーズだったが、伸びた草を払ってみると高低差のある敷地はなんと、三段に分かれていた。しかも、家を建てたい一番上の敷地が一番狭いのだ。
眺望を確保しつつ、農作業の小屋と農機具を置ける駐車スペースを設け、機能性も損なわない。そんな条件をクリアするために同社が提案したのが、上の段に建てる住宅(母屋)と、下の段の農作業小屋をウッドデッキ(ブリッジデッキ)でつなごうというもの。
「敷地の全容があらわになったときは不安でした。でも提示されたプランを見て、不安は大きな期待に。実際に使ってみてもすごく便利!」と声をそろえるご夫婦。敷地の特性にフォーカスした同社の柔軟な発想が、A邸だけの景色や住み心地を叶えている。
厳選された素材が創る森の中みたいな居心地
同社では、土地や環境を読み解いて建物に反映させるノウハウを磨いてきた。加えて、天然木などの素材の持ち味を引き出す施工・加工、自然エネルギーを活かす設備・性能でも試行錯誤を繰り返し、『木楽な家』は常に進化を続けている。
新伊集院モデルと同じく、A邸の外壁には自社で製材・熱圧加工した杉の黒芯(くろじん)を採用。無塗装ながら、熱圧加工処理のおかげでメンテナンスフリーを実現。1階部分には水や汚れを弾く塗り壁で、コントラストを付けた。
木肌が心地いい内部空間も同社の家の特徴。家族がくつろぐリビング・ダイニングは、東西にフルオープンサッシを設えることで、開放感と抜群の風通しを手に入れている。「ここで生活するようになって、ぐっすり眠れるようになりました」と奥様。天然木に包まれ、森の中で過ごすような住空間は眠りの質も高めてくれるようだ。季節の移ろいを感じながら、日々の暮らしを存分に楽しんでいるAさん夫妻である。